ドローン夜間飛行⑥〜秋の長雨に寄せて〜
「校長先生、できました!」
と、「彼」が嬉しそうに見せてくれたのは、例の「ドローン夜間飛行」のマニュアルでした。
「マニュアルができたら一度見せてね」とは伝えていたものの、前例のない挑戦に対して、どんなアドバイスを送るのが正解なのでしょうか。
「質問したら、ダメ出しがたくさんありました」
「誰に聞いたの?」
「ChatGPTに聞きました!」
思わず納得してしまいました。最終的には教員も確認し、国土交通省への申請も行いますが、多角的な視点から精査してくれるAIは、実に頼もしいアドバイザーです。シンギュラリティは、もう起きているのかもしれません。
「無人航空機 夜間飛行実施マニュアル 運航者名●●●●」と表紙に記された計15ページに及ぶマニュアルでしたが、どこに何が書いてあるのかも頭の中に入っているようでした。このマニュアルを申請して、あとは練習の日と本番の日を迎えるのみ。そこに立ちはだかったのが、連日の「秋の長雨」です。
平安を代表する情熱の歌人、小野小町はこんな有名な歌を残しました。
花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに
「春の長雨が降る間に、桜の花の色はむなしく色あせてしまった。私の美しさも、物思いにふけるうちに衰えてしまったように」
春の長雨の間の物思いと容色の衰えを嘆いた小町ですが、この秋の長雨の間、彼はAI相手に熱心に壁打ちを重ね、見事なマニュアルを完成させました。長雨も決して無駄な時間ではなかったようです。
そんな中、生徒会でも下級生から「〇〇先輩!」と、あちこちで頼りにされている彼の姿がありました。周囲からの信頼の厚さと、愚直に成果を追う「仕事人」としての姿勢は、実に見事に相関しています。
長雨も、いつかは必ずあがります。
雨がやんだその時、AIとともに練り上げた最高のマニュアルを手に、ドローンが秋の夜空へ見事に飛翔する日は、さていつになるのでしょうか。