ドローン夜間飛行②〜夏は夜。月のころはさらなり。闇もなほ〜
「夏は夜。月のころはさらなり、闇もなお――」
夏の夜の趣深さをそう評したのは、平安時代の清少納言です。暗闇の中に蛍が幾重にも飛び交う光景は、街明かりのない時代、どれほど美しく幻想的だったことでしょう。
前回のブログではサン=テグジュペリの『星の王子様』を引きましたが、ドローンで闇夜の校舎を撮影する試みは、実はこうした日本の古来の美意識にも通じるものがあります。
……しかし、令和の夏は甘くありません。
お盆を過ぎてもなお残る強烈な暑さの中、まだ夜闇には遠い夕刻の体育館に、彼の姿がありました。
ドローンの夜間飛行を行うには、事前に1時間(60分間)の飛行実績(練習)が必要です。「適当にやったことにしてしまえば?」と効率主義者なら囁くかもしれません。けれど、コントローラーにはすべての飛行データが正確に記録され、それを提出しなければならないのです。
何より、彼自身に妥協という文字はありませんでした。
室温42度。もはや砂漠以上の酷暑となった体育館で、じっと機体に向き合います。
テスト飛行では、最初は照明をつけた状態で順調だったものの、いざ消灯して試すと機体が予期せぬ挙動を見せました。わずか1メートルほど上昇したところで、ぴたりと停止。通常ならGPSで自動帰還するはずが、戻ってこない――あきらかな「失敗」でした。
「なんで飛ばなかったの?」
後から尋ねた私に、彼は迷いのない声ではっきりと答えました。
「どうしてこうなったか、理由はわかっています。でも12分間は飛びました。」
原因を見極めた彼の目は、どこまでも前向きで、学びに対して貪欲でした。あとは残りの48分間の練習を積み重ね、操作を完全に体得できればクリアです。
古語の「をかし」は、現代語で「いいね!」と訳されることがあります。
暑さに負けず、失敗すらも糧にして未知の課題へ挑む彼の姿は、まさに「いとをかし」でした。
漆黒の闇夜の中、4つのライトを備えたドローンがとびちがうことはないけれど、舞い上がる瞬間を、私もこの目で確かめたいと思っています。